胃漿膜表面(腹膜)から腫瘍細胞までの距離(DIFS)測定が、胃癌患者の腹膜播種再発の予測に有用
★1/16 日刊工業新聞 朝刊に掲載されました。
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腾博会国际娱乐_腾博会游戏大厅-【官方授权牌照】大学院医学研究科 癌分子病態制御学?消化器外科学 八代正和(やしろ まさかず)研究教授、栂野真吾(とがの しんご)大学院生?医師らの研究グループは、診断病理?病理病態学との共同研究によって、胃漿膜表面(腹膜)から腫瘍細胞までの距離(DIFS)測定が、胃癌患者の腹膜播種再発の予測に有用であることを明らかにしました。
腹膜播種再発※1は、胃癌手術後に最も頻度の高い再発形式です。今回はT3レベル※2の進行胃癌患者を対象として、胃漿膜表面から癌細胞までの距離を、高性能顕微鏡を使ってマイクロメートルレベルで測定を行いました。その結果、腹膜表面からがん細胞までの距離が、ある基準より近くなると腹膜播種再発のリスクが高まることを発見しました。腹膜から腫瘍の距離に着目しリスク基準数値を発見したのは、本研究が初めてです。わずか1分程度でDIFS測定が可能であり、術後の胃癌患者に対してこの測定を行うことで、再発リスク分類による抗がん剤治療決定に役立つことが期待されます。
この研究成果は、日本時間2020年1月16日(木)4時に科学雑誌PLOS ONEにオンライン掲載されました。
?※1 腹腔内を覆う腹膜の表面に腫瘍細胞が散布され、生着した状態。
?※2 壁深達度のことであり、癌細胞の浸潤が固有筋層を越えているが、
漿膜下組織にとどまるものを指す。
記者レクチャー
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研究の背景
胃癌は、本邦の癌死亡者数の第3位と高頻度で、5年生存率は約60%の悪性度の高い癌です。胃癌の死因は、手術後の再発が大きく影響します。再発のなかでも、癌細胞が腹膜腔に散らばる腹膜播種再発(図1) が最も多く、胃癌再発の約40%を占めます。癌細胞が腹膜腔に露出遊離している胃癌(T4胃癌)に腹膜播種再発が多いですが、癌が腹膜腔に露出していない胃癌(主にT3胃癌)でも、腹膜播種再発を起こすことが少なからずあります。今回、T3胃癌のどの因子が、腹膜播種再発に影響するか検討しました。
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本研究の内容
胃癌根治手術を行った患者の中から、T3胃癌患者96名を抽出し検討したところ、16名が腹膜播種再発しました。様々な因子を調べたところ、胃漿膜表面(腹膜)から癌細胞までの距離(DIFS)(図2) が腹膜再発と深く関連していることが分かりました (腹膜播種再発患者の平均DIFSは156?、再発していない患者の平均DIFSは360?)。特に、234?を境にDIFSが234?より短い胃癌患者は、明らかに腹膜播種再発を起こす頻度が高く、予後が不良でした (図3)。この検証結果より、腹膜播種再発のリスク値は234?であることが分かりました。
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期待される効果
根治手術を行った胃癌患者のDIFSを測定し、測定値が234?より短い胃癌患者に対して、再発予防のためにより強力な抗がん剤の投与を行うなど、手術後の治療方針に役立つ可能性があります。このように、手術後に早めの測定を行い、治療方針を決めることで腹膜播種再発を回避できることが期待されます。
本研究の資金について
科研費(No. 18H02883(M.Y.))を使用しました。
掲載誌情報
雑誌名:PLOS ONE
論文名:Microscopic distance from tumor invasion front to serosa might be a?
useful predictive factor for peritoneal recurrence after curative?
resection of T3-gastric cancer
著? 者:Shingo Togano,Masakazu Yashiro,Yuichiro Miki,Yurie
? ? ? ? ? ?Yamamato, Tomohiro Sera,Yukako Kushitani,
? ? ? ? ? ?Atsushi Sugimoto,Shuhei Kushiyama,Sadaaki Nishimura,
? ? ? ? ? ?Kenji Kuroda,Tomohisa Okuno,Mami Yoshii,Tatsuro Tamura,
? ? ? ? ? ?Takahiro Toyokawa,Hiroaki Tanaka,Kazuya Muguruma,
? ? ? ? ? ?Sayaka Tanaka,Masaichi Ohira
掲載URL:https://journals.plos.org/plosone/articleid=10.1371/journal.pone.0225958