スピンフォトニクスイメージングによる分析?診断技術の創出
研究成果の概要
代表者がこれまでに開発してきた「量子センサ型電子スピン共鳴ハイブリッド光学顕微鏡」(スピンフォトニクスイメージング技術)を発展させ、幹細胞の分化時における in vitro 一細胞温度計測、および、線虫のin vivo 顕微温度イメージングを実現することを目的とした。将来的には、再生医療における幹細胞の健康診断や神経情報学における線虫温度特性分析の基盤解析ツールとしてとしてバイオラボへの実装を目指している。また、量子センサナノ粒子(温度?磁気?電気に反応)を必要としない次世代イメージング技術の萌芽的な研究を開始し、有機電子デバイスへの展開を探った。
2 年間のプロジェクト推進の結果、(1) 幹細胞の一細胞温度計測、(2) 線虫の in vivo 顕微温度計測を実現した。また、マウス in vivo 脳温度計測や有機デバイスの量子センサフリー計測技術の開発など萌芽的な学術テーマにも取り組んだ。産学連携に関しては、BioJapan2019 などの展示会への出展やバイオ系研究室での出張技術セミナーなどに取り組み、複数企業と共同研究に関する意見交換を行った。国際交流に関しても、海外連携研究室の若手研究者受け入れや国際ワークショップを開催した。
本プロジェクトによって共同研究基盤が整備され、新たな発想が生まれることで、科研費?基盤研究(A)をはじめとして全体で科研費(8 件)?民間財団奨学金(6 件)などに採択され、今後本格的な研究展開が期待される。本プロジェクトは「スピンフォトニクス」をキーワードに本学の若手が結集し、本学の新しいコア研究を提示した点で、今後の若手研究者のロールモデルとなるものである。
第三者評価
評価1
本研究は、蛍光ナノダイヤモンドのカラーセンターの生物応用に関する課題である。最も特筆すべき点は、線虫の微小領域の温度をモニターすることに成功したことである(Fujiwara, et al., arXiv, 2001.02844, 2020)。これは、物理、生物、化学の研究者を結集した国際共同研究により達成されたものであり、代表者の高い研究能力とともにその広い人的ネットワークが有効に機能した結果である。さらに、科研費基盤Aが採択され、今後の発展がますます期待される。
評価2
関連論文を閲覧し、研究成果の項目1と2の達成率は80%程度と判断した。達成率が低いわけではなく、2年間の研究計画としては多すぎる提案内容であったためである。非常に挑戦的な課題である。終了時の成果量を図らず、できる限りのことを課題目標に置いている。本PJに関連するアクセプト論文が3-4本あり、arxive上にも別の関連論文が投稿されている。論文の内容は実直であり、引用数が期待される。医療現場の要求に配慮した量子物理計測デバイスは実用化において重要である。ボトムアップ的に構築された本PJチームは今後、学際的研究分野で活躍すると感じる。